
このところ購読した新書はみんな面白いものばかりで、この一冊も非常に興味深かった。冒頭に示されている「偶然とは何か」という問いに対する答は、辞書的な意味も含めて様々だが、私には40番目の断章に書かれてあること「もし無人島で暮らしていたら、果たして偶然ってあるんだろうか」が印象に強い。
無人島ではどんなことが起こったとしても「偶然とはちょっと違った出来事」に感じるとすれば、結局、大多数の人間と共に暮らしているという現実がもとになっている「人間的な出来事」である。それを決めるのは「選択」であり、その行為は様々な「因果の連鎖にかかわっている」と、自分を、生活を振り返りたい。
この本の提案の凄さは、「自分の身に大きな問題が起こったとき、できるだけ自分で選択しないように心がけよ」という点にある。その理由は、縷々書かれているが、確率論も含めて納得のいく箇所が多かった。現在の教育内容の重要な観点の一つに「自主的・積極的選択」があることは間違いなく、その意味で刺激的だ。
「勝ち組・負け組」などと言うが、誰しも知っているように勝ち負けはそう簡単には決まらず、考え方一つで入れ替わる場合もある。筆者は、だからこそ「勝ち負けで決められない」ではなく、「勝ち負けで考え、状況を客観的に判断する」ことの大切さを説く。その柔軟な姿勢が、偶然や運をつかみとるための条件だ。