えほんひらけば

手にとった絵本を自分なりに紹介していきます。

のら猫のかみさま

f:id:spring254:20201025103723j:plain

(くすのきしげのり・作  狩野富貴子・絵  星の環会)

 

 五編の中で「読み聞かせたいなあ」と感じたのは、まずこの作品だった。

 

 絵本を注文して、声に出して読んでみたら、あああと思った。

 犬が亡くなった後のシーンで、思わず涙腺が緩んでくる。

 

 これはちょっと読み込まないと、人前に出せないな…

 と思っていたところ、先日の研修会で「おすすめ本」として選んだ方がいらっしゃった。

 その段階はクリアしたようで、ご自分なりの表現で読みきっていた。

 他の方の読みを聞いたことで、また一つ客観的になれた気がした。

 

 年老いた飼い犬の餌を、盗むように漁り続けたのら猫が、産んだ子猫と一緒にそれを続け、そしてその犬がなくなる時を迎える…

 

 「愛」というシンプルな語しか思い浮かばない。

 

 これは年中児から上ならば誰にでも読んであげたい、読んでほしい物語だ。

 

 

 

海の見える丘 ~あなたの未来へ贈る5つの物語

f:id:spring254:20201017091809j:plain

(くすのきしげのり  星の環会)

 

気まぐれの再スタートは、分類すれば「絵本」ではない。

 

本の帯に書かれているのは「くすのきしげのりがはじめて紡ぐ大人のための短編集」。

 

巻頭、あとがきには、この一冊のテーマが記されている。

 

「人は、自らの人生を俯瞰するとき、そこに何を見るのでしょうか」

 

カットもイラストもないこの本は、まるで「絵」を待っているようにも思える。

 

そういう思いを引き起こさせるねらいも当然あるかのように、一つ一つの作品が絵本として発刊されている。

 

初見で気に入った2編については絵本も購入した。

 

意識としては「読み聞かせたい」という思いの強い作品だ。

 

この後、紹介していきたい。

ひゅるりとかぜがふくおかで

f:id:spring254:20200104170934j:plain

『ひゅるりとかぜがふくおかで』 (accototo ふくだとしお+あきこ)幻冬舎2008.5

 

「げつようび」から「にちようび」まで、いろいろな生き物が登場する。

 

それらが、捕食者となりそれぞれをつかまえ、食する世界を、たんたんと描く。

 

いわゆる食物連鎖ということになろうが、その展開を、全編七五調のリズムで文章化しているところが個性的である。

 

「にちようび」の次は「10ねんたった げつようび」で締めくくられる。

 

しかし、この中ではやはり人間だけが異色と言えると今さらながら思う。

死んで土に還るか…。

 

 

【小学校低学年から高学年までがおススメかな】

おそろしいよる

f:id:spring254:20191221062923j:plain

『おそろしいよる』 (きむらゆういち・作  殿内真帆・絵)すずき出版 2019.9

 

あらしのよるに」が有名な作家の新刊本。

 

どんな感じかとめくってみると、楽しい、楽しい。

 

色遣いも独特で、主人公のコブタの表情や部屋の様子なども、お話によくマッチしている。

 

小さい子ども相手に、表情を見ながら読み進めるのに、いい本だと思う。

 

 

 

【年中児あたりから小学校低学年までがお似合いですね。】

月火水木金銀土日 銀曜日になにしよう?

f:id:spring254:20191221061842j:plain

『月火水木金銀土日 銀曜日になにしよう? 』(増田ミリ・作  平澤一平・絵) 幻冬舎2012.12

 

 

『はやくはやくっていわないで』のコンビによる一冊。

 

もはや、題名で圧倒される。

 

最初のページに「銀曜日には大きなクリームソーダ」と一行だけ。見開きで、巨大なクリームソーダを楽しむ子どもや動物の絵が、目いっぱい描かれる。

 

 

そのパターンで面白い想像が展開されるから、読んでいても楽しい。

 

見る方も楽しい。時には歓声が上がる。

 

3分かからないので、読み聞かせに隙間があったときにでも利用できる。

 

【年中児から3年生ぐらいまで。】

はやくはやくっていわないで

f:id:spring254:20191221061547j:plain

『はやくはやくっていわないで』 (益田ミリ・作  平澤一平・絵) ミシマ社2010.11

 

最初、低学年用にいいかなと思って読み始めたら、迷いだした。

 

まだ教員意識があるのかな、と正直に思う。

 

「はやくはやくっていいわないで」

「どうしてできないのってきかないで」

「ひっぱらないで」

 

という声に、少し耳の痛い自分を感じるのである。

 

読み聞かせで、知らない子どもたちを前に無責任?に、語りかけていいものか。

 

もちろん、今の世の中、当然のことだとは思う。

なんせ、この絵本は産経児童出版文化賞に輝いてもいるらしい。

 

しかし、読まれたら、センセイガタ、 ニガワライカナ…という気持ちも過ったりして…

 

 

だから、これは思い切って…

 

【大人向けにいいでしょう】

はやくおきてよ サンタさん

f:id:spring254:20191219163923j:plain

『はやくおきてよ サンタさん』 (マーカス・フィスター作 那須田淳・訳) 講談社 1998.10

今月はクリスマス近くに、低学年への読み聞かせが予定されているので、何か一つ時季的な絵本を選ぼうと考えていた。

 

少し探してみて、これが面白いと思った。

 

愛すべきキャラクターとしてサンタが描かれる。

つまり寝坊しているし、くつしたはどこに置いたか忘れるし、ソリはサビているし、トナカイに食べさせるのも遅れるし…。

 

さらには雪がどんどん降ってきて大変になって…。

と展開していくのだが、実は…。

 

 

今の子どもたちがサンタクロースの存在に対して、どんな思いを抱いているのかさだかではない。

しかし、このお話のサンタに対しては、笑顔を浮かべて共感してくれるのではないかと思う。

 

 

【年長児から小学校低学年でしょう】